こんにちは。
ALS(筋委縮性側索硬化症)の人工呼吸器装着について、日々考えていることをちょっと書き下ろしたいと思います。
ALSは運動ニューロンの変性により全身の骨格筋の筋力低下が急速に進行する病気で、一般的には3~5年で呼吸不全のために死亡してしまいます。
そのため、発症早期から人工呼吸器の装着をどうするかについて決断を患者本人も家族も迫られます。
ただ人工呼吸器をつけてからも症状は進行し、最悪の場合はTLS(閉じ込め症候群)となってしまい目も動かせず開眼することもできず、一切の表出をすることもできない状態となってしまう可能性もあります。
そのような中で人工呼吸器の決断をすることはとても困難を伴います。
長く私もその決断をする患者たちを見てきましたが、どちらが正しいのかなどははっきり言えず、ケースバイケースにならざるを得ないという風に考えています。
ただ医師のかかわり方については正直違うんじゃないかと思う場面が臨床現場では多くあります。
具体的にはまず人工呼吸器の設定や長期人工呼吸器装着の患者に対する呼吸ケアについての理解不足があるのではないかと思う点です。
人工呼吸器の設定は非常に複雑で圧換気か量換気かに始まり、換気量や圧設定、換気回数、PEEPの有無や程度、マスクの選択など考えることがたくさんあります。
そしてその後のケアについても肺炎予防や無気肺予防のための体位交換や排痰手技、離床機会の確保などについても継続的にかかわっていく必要があります。
人工呼吸器の装着を患者にさせるということは、そこまでのケアをやる義務が我々医療従事者にはあるのではないかと思います。
ですが実際には人工呼吸器を処方する医師は処方したらしっぱなしで、その設定が合っているのか?という目線を持っていない方が多いように感じます。
そして関わる機会の多い看護師や我々リハビリ職もその理解は不十分で、肺炎や無気肺を十分に予防することができなかったり、より快適な療養環境を提供することができていない現実があることと思います。
自分もそれを痛感することが多々あります。
この点については今後書くことがあるかもです。
もう一点は呼吸不全による呼吸苦をモルヒネ等の緩和ケアで軽減する方法もあるということを十分に説明しない点です。
ALSの診療ガイドラインでは呼吸苦についての緩和ケアについても説明したうえで人工呼吸器についても説明すべきことを明記しています。以下のその文章を引用させていただきます。
「特に ALS 終末期においては呼吸不全が生じることが多く、患者の 50%は呼吸苦を生じると報告されているが、このような呼吸苦はがんにおける呼吸苦と同様に、通常少量のモルヒネなどの強オピオイドにて緩和できることを説明する。
また、様々な医療処置は延命治療の側面と緩和ケアの側面があることも十分に説明すべきである。この際、人の価値観は様々であり、医療者個人の終末期医療に対する考え方を押しつけないように十分に注意をして対処する 。(筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013 clinical question3-10より)」
ですが、実際の現場ではオピオイドの説明をすることなく、人工呼吸器しか呼吸苦を取り除く方法がないかのような説明をするケースが往々にしてあるような印象です。それでも装着を希望しない患者について、ぎりぎりまで呼吸苦が進行し正常な判断がつかない段階で呼吸器装着の希望を改めて聞いてうなづけば即装着というケースも実際に経験があります。
これが医療者として正しい判断か?ということについてはよくよく考えるべきではないかと思います。オピオイドが効かないケースはたしかにあるので、そうなると呼吸器の装着を結果的に希望されるケースもあると思いますが。
患者に有意義とは言えない延命処置を行い、長期病床を埋めるための数に入れてはいけないと思います。ですが、実際はそういうことが行われてる現場が少なからずあることを感じています。
人工呼吸器を装着する選択をしてもしなくても、我々医療従事者は最後までその人がその人らしく人生の終わりを迎えられるよう、最後に「よかった」と思える人生にできるようにそのお手伝いをできることが大事だと常に思っています。
個人の思う価値観はあると思いますし、経営する立場としては利用者を増やしたいという気持ちもあるかもしれませんが、そんなことで患者の人生を変えてはならないと思います。
自分のこのような考え方はまだまだ甘いかもしれませんが、ぜひ無駄な延命や緩和ケアや呼吸ケアについてもっともっと考えられる医療従事者が増えてくれればいいなと思いました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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