こんにちは。
神経難病に関する論文で興味深い論文があれば、このブログ内で紹介していきたいと思います。
今回はその記念すべき第一弾です。
本日紹介したい論文は
Ulric S Abonie, John Saxton, Katherine Baker, et al. 2021 ”Objectively-assessed physical activity and self-reported activity pacing in adults with multiple sclerosis: A pilot study.” clinical rehabilitation 35,no12,1781-1788 CC-BY
(「成人多発性硬化症患者における客観的に評価された身体活動と自記式活動ペーシング」)
です。
神経難病の患者においては日常生活における活動量が過負荷にならないようにと指導されることが多くあります。
一方でどのように活動量をマネジメントするのか、マネジメントされた活動量は本当に適しているのか?という疑問は今なお払拭されてはおりません。
そのような疑問に1つ参考になる研究報告になります。
では見ていきましょう。
背景
多発性硬化症患者において定期的な身体活動は健康的な生活様式の中心的要素と考えられ、それは多発性硬化症での疲労症状、QOL、身体機能の維持・改善と関係していると考えられている。しかし身体活動に関連した疲労感の経験や予期は多発性硬化症患者の症状増悪に関与する可能性があり、いくつかの活動関与戦略が求められる。そのため身体活動行動に悪影響を与えない疲労症状の管理のための戦略を探索することは必要不可欠なことである。活動ペーシングは多発性硬化症患者の身体活動を改善し、症状の管理を助ける可能性のあるものだが、どのように影響を与えるかは不明で結論が出ていない。活動ペーシングは症状や障害の悪化と関連しているとする報告もあれば、その反対あるいは無関係とする報告もある。
目的
多発性硬化症患者において客観的に計測された身体活動行動と自記式活動ペーシングの関係性を調べること。
方法
18歳以上で過去30日以内に再発しておらず、かつ12か月以内に身体活動プログラムを受けていない歩行期の多発性硬化症患者を募集した。
以下のデータを計測した
- 客観的に計測された身体活動行動
・7日間の平均累積活動分数
・身体活動の変動性(7日間の平均活動ピーク時間/平均身体活動時間 - 自記式活動ペーシング
・activity pacing and risk of overactivity questionnaire - 疲労度
・fatigue severity scale - 健康関連QOL
・RAND-12-Item Short-Form Health Survey Quastionnaire
統計はshapiro-wilk検定およびQ-Qプロットの目視にて正規分布の確認を行い、自記式活動ペーシングおよび身体活動行動の関連性は散布図を用いて検討した。
結果
合計21名が組み入れられた。この群はfatigue severity score>4と疲労度が高く(4.75±1.62)、BMIはわずかに25を超えていた(25.20)。散布図より自記式活動ペーシングは身体活動行動および変動性と負の関連性を認めた。
結論
疲労度の高いMS群においては自記式活動ペーシングの活用は身体活動量や変動性を減らすことが推測され、活動不足になる可能性が示唆された。
臨床応用・さらなる研究へ
・セルフでの活動ペーシングはMSの症状管理のための回避行動に使わせるのではなく、廃用あるいは過活動を抑制し、適切な活動量を維持するために使用されるべき。
・その他の難病でもセルフでの活動ペーシングは重要であることが想定され、加速度計などの客観的なツールを用いた活動量との関連性を検討し、自主練習等を処方する上での検討材料にできる可能性がある。
まとめ
今回紹介した報告では患者自身での活動量モニタリングがかえって廃用症候群を起こす可能性を示唆するものでした。廃用症候群は過活動同様にPTとしては予防したいところだと思いますので、過活動の面だけを評価するのは危険といえますね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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