こんにちは
「2025年問題」、「地域包括ケアシステム」、「地域ケア会議」などなど、現在日本が直面している少子高齢化問題に伴って、新しい言葉や新しいシステムが出来上がってきている昨今です。
我々理学療法士(PT)もこの分野を避けて通ることはできず、この世界で生き残ることを考えれば、知っておかなくてはいけない部分だと思います。
が、団塊の世代が75歳以上となる2025年へ向けて急ピッチで色々な取り組みがされ、ついていけていない人も多いのではないでしょうか?
かく言う私もそんな一人です。
今日はその中でもPTが取得することができる資格、「地域ケア会議推進リーダー」、「介護予防推進リーダー」について、取得する意味・メリットを考えていきたいと思います。
日本の介護・福祉の現状
とりあえず最初は介護・福祉を取り巻く現状について、自分なりに整理をしてみました。
2025年問題
先ほども触れましたが、日本では2025年に「団塊の世代」が75歳以上になり、高齢化社会がピークを迎えていきます。
これだけ騒がれている問題なので、大変なのはなんとなくわかっているかと思います。
以下の資料は厚生労働省がまとめた今後の高齢者人口の見通しについてです。
この資料で分かることは4つです。
➀ これからも急激に高齢者が増えていくこと
➁ その中でも動ける認知症高齢者が500万人近くに増えること
➂ 単独世帯、夫婦のみの世帯も増えること
➃ 特に都市部の高齢者増加率が高いこと
そのため、介護予防につとめて元気で健康な高齢者を増やすこと、介護が必要な高齢者を少ない介護力で効率よくみていくシステムが必要です。そして高齢化の進展状況に大きな地域差があるため、そのシステムは地域の実情に合わせたものでなくてはなりません。
このような考えの中で生まれたのが「地域包括ケアシステム」です。
地域包括ケアシステム
重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供されるシステムを指します。このシステムは概ね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を単位として想定しています。
➀ 認知症高齢者の生活を支えるためのシステムとすること
➁保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域特性に応じて作り上げていくこと
を求めています。
ただ、このシステムを構築しろと言われても、参考になる前例があるわけでなく、地域ごとに抱えている問題が異なるとなると、一筋縄ではいきません。みんなで知恵を結集して、構築していかなくてはいけないわけです。
そこで最近言われているのが「地域ケア会議」の存在です。
地域ケア会議
地域ケア会議は、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法です。
大きく2つの役割の中で5つの機能を通して、地域包括ケアシステムの構築を進めていきます。
大きな役割➀ 個別ケースの検討
個別ケースのケアマネジメント支援のために専門多職種を集めることで、公的サービスのみならず他の社会資源も積極的に活用しながら、高齢者個人の課題分析と在宅生活の限界点を上げるための支援の充実に向けた検討を行い、これらの個別ケースの検討の積み重ねを通じて、高齢者の自立支援に資するケアマネジメントを地域全体に普及することにより、地域で高齢者を支えるネットワークを強化します。
要は、個別ケースを通して多職種の集まる場を地域包括ケアセンター等が提供することで、顔の見える連携を強化していくってことですね。
「サービス担当者会議」と一見一緒にみえますが、その実態は異なります。
一つ目は主催が異なる点です。「サービス担当者会議」はケアマネージャーが主催であるのに対し、「地域ケア会議」は地域包括支援センター又は市町村の主催で行われます。
2つ目は参加者の違いです。「サービス担当者会議」は基本的に各サービス担当者が参加するため、保健・医療職やインフォーマルサービス、住民組織等の協力者の参加が少ないという実態があります。一方で、「地域ケア会議」は、保健・医療職やインフォーマルサービス等を含めた地域包括支援ネットワークで行われます。
そして、この役割を果たすため、以下の機能が備わっています(下図参照)。
機能➀ 個別課題解決機能
機能➁ ネットワーク構築機能
機能➂ 地域課題発見機能
大きな役割➁ 地域課題の検討
個別ケースのケアマネジメント支援のための担当者レベルでの地域ケア会議を開催し、それらを積み重ねていくことで共通される地域課題を発見・把握することが求められます。日常生活圏域の中で共有されたそれらの地域課題をさらに市町村・地域全体で共有していきます。そのように地域課題を共有し、対策していくことで地域包括ケアシステムの構築を進めていきます。そのため、この役割を果たすために以下の機能が備わっています。
機能➂ 地域課題発見機能
機能➃ 地域づくり・資源開発機能
機能➄ 政策形成機能
次に介護予防についても、少し触れていこうと思います。
介護予防
介護予防は以下のように定義されています。
「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」
介護保険 = 高齢者の自立支援を目指す!!という性質がありますから、介護予防は介護保険の中で行われて何ら問題はないですし、行われるべきものであると言えます。
さらに介護保険法第4条(国民の努力及び義務)では、
「国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションそのほかの適切な保健医療サービスを利用することにより、そのゆする能力の維持向上に努めるものとする」
としており、国民自らの努力を国が求めていることが分かります。
そして介護保険法第115条45(地域支援事業)
「可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するために、地域支援事業を行うものとする」とあります。
つまり…
介護予防は国民が主体的に取り組むべき義務であり、高齢者が可能な限り自立した日常生活を送り続けていけるような地域づくりをしていかなくてはならない、ということが言えます。
そんな介護予防には一次・二次・三次予防があります。
一次予防は健康な者を対象に、生活習慣病の発病そのものを予防する取り組み(健康づくり、疾病予防)になります。
二次予防はすでに疾病を保有する者を対象に、症状が出現する前の時点で早期発見し、早期治療する取り組みになります。
三次予防は症状が出現した者を対象に、重度化の防止、合併症の発症や後遺症を予防する取り組みになります。
介護予防・生活支援総合事業によりこれらが切れ目なく総合的に展開することが可能となります。
では実際、介護予防事業によって本当に医療費の抑制につながるのでしょうか?
平成30年4月に内閣府より出された分析データによると…
2015年度の介護予防普及啓発事業参加延人数(5582人)を基準に増加幅別(横軸)にどの程度の歳出削減効果があるか、試算した結果になります。
この表によると、介護予防普及啓発事業参加人数が10倍になると、平均270億円の歳出削減効果が期待されるとのことです(ifの話に過ぎませんが…)。
昨年5月の産経新聞の記事では予防対策で16年後の介護費が2割の3.2兆円抑制できるという試算が政府より出たことを書いています。生活習慣病に関する予防について限局しても130億円の医療費抑制効果があるとしています。
産経新聞 予防対策で16年後の介護費2割、3.2兆円抑制 政府試算
https://www.sankei.com/politics/news/180514/plt1805140004-n1.html
一方で、予防医療にかかる予算額も考慮すると抑制効果はないという意見もあるようです…
東洋経済新報 「予防医療で医療費を削減できる」は間違いだ
https://toyokeizai.net/articles/-/237147
まあいずれにしても、医療費抑制という大義名分のもと、介護予防事業は行われていますし、これからもっと基盤が出来てくると思います。
予防医療が本当に医療費削減に貢献するかについては、また機会があれば記事にできるように勉強もしてみようかなと思います。
地域ケア会議推進リーダー・介護予防推進リーダー
ここまでが介護を取り巻く日本の大きな流れです。
これを受けて日本理学療法士協会では「地域包括ケアシステム」を推進するにあたり、「地域ケア会議」、「介護予防」の2つの施策に重点を置き、地域包括ケアシステムに関わることのできる人材の育成を始めています。そのための育成制度として、「地域ケア会議推進リーダー」、「介護予防推進リーダー」の2つの資格コースを設定しました。
※地域ケア会議推進リーダーは以前、地域包括ケア推進リーダーという名称でした。
この資格は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士協会の中で設定された資格で、他職種にはないリハ職特有の資格です。ただ研修自体は他の医療・福祉職でも受け入れているケースも多いみたいですね。
この資格を取得したことで法的にできることが増える…といったことはないようですが、これらの資格を取得している方たちで、地域ケア会議の運営や参加、介護予防体操などの活動に従事するよう、行政が推し進めているようです。
ですので、地域密着型での活動を考えている人は今後取得していくことが求められる資格と言えますね。
資格取得のメリット
で、本題のこの資格を取得するメリットについてですが、まあ上記のような事業に関わる方であればとっておいたほうがよいかと思います(所属する施設や市町村の考え次第ですが)。またそういった事業を行っている施設への転職を考えているなら、採用の際に有利になる可能性も考えられますね。
そうでない人も一応メリットはあります。
これら推進リーダーを取得することで、それぞれ「地域理学療法認定理学療法士」「介護予防認定理学療法士」「生活環境支援専門理学療法士」取得の際に必要になる選択ポイントのうち40ポイントとして使用することが可能です。
なんでもいいから認定ほしい!!という人は推進リーダーも取れて一石二鳥かもしれません(笑)。
いずれにしても地域で働くことを専門にしたいと考えているなら、早めに取得して損はないのではないかと思います。
取得については日本理学療法士協会のHPにて分かりやすく説明をしてくれていますが、一応簡単に紹介しておきます。
取得方法
取得要件は1つです。
それは新人教育プログラムを終えていることです。
そして取得に当たって必要な講習は3つです。
それぞれ登録申請をした後に、これらの講習を受ける必要があります。
3つの講習の受ける順番は順不同で構わないようです。
導入研修については各都道府県の理学療法士協会からアナウンスがあると思いますので、忘れずにチェックしておいてください。
もう募集が始まっているところもあると思います。
2019/6/9追記
※日本理学療法士協会の㏋上では講習の順序は順不同で大丈夫なように描いていますが、各都道府県の理学療法士協会により異なる場合もあるようです、、、
e-learning・導入研修についてはそれぞれこんな感じで講義が用意されています。
介護予防推進リーダーはちょっとコマ数も多く、時間もかかりますね。
ただし
・士会から推進を受けた会員
・地域、介護予防認定理学療法士取得者
・ケアマネージャー資格取得会員
についてはe-learningの受講が免除になります。
士会指定事業については、各都道府県により異なるようです。
協会が出している例では、
・士会行事の参加
・士会総会への出席
・地域ケア会議
・予防活動事業への参加
などが挙げられています。
これについても各都道府県の理学療法士協会で調べておくとよいと思います。
自分が気になって調べたのですが、書いてみると無駄に長くなってしまった気がします。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
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